巻き爪 痛み ゼロ!
2026/08/28
〜「キュアよりケア」が支える、その人らしい生活〜
先日、とても印象深いフットケアの事例がありました。
その方は90代の女性。腎機能をはじめ全身状態が低下し、ターミナル期に近い状態で、長期間ベッド上で生活されていました。嚥下状態も悪く、体力的にも厳しい状況にありながら、強い精神力で日々を過ごしていらっしゃいました。
そんな中で訴えられたのが、両足の親指の痛みでした。
ベッド上の生活でも、爪は変化し続ける
「長期間ベッド上で生活しているから、巻き爪はそれほど進行しないのではないか」
そう考える方もいるかもしれません。
しかし、人の身体は生きている限り、常に変化し続けています。
心臓は動き、呼吸をし、皮膚も爪も変化し続けます。
その方にも、もともと巻き爪がありました。さらに爪を短く切りすぎたことや、その後のむくみなどが重なり、爪の周囲が強く圧迫されていたのではないかと考えられました。
両足の親指の先端は紫色になり、血流の悪化が疑われる状態でした。一部には傷ができ、炎症も起こりかけていました。
「どうしたら、この痛みを少しでも軽くできるだろう」
すでに爪をこれ以上削ることはできません。
そこで、私たちはテーピングによって圧迫されている部分を逃がし、負担を軽減する方法を試みました。
すると、驚くような変化がありました。
テーピングを行った直後、紫色だった皮膚の色が少しずつピンク色へと変化したのです。
もちろん、すべてが一瞬で正常な状態になったわけではありません。
しかし、圧迫を軽減することで、その場で目に見える変化が現れたことに、私自身も大きな驚きを感じました。
その変化を写真でご本人にお見せすると、とても感動され、涙を流してくださいました。
「最後までケアは必要」
この経験を通して、改めて強く感じたことがあります。
それは、
人は生まれてから人生の最期を迎えるまで、身体の変化に合わせたケアが必要である
ということです。
自分でできる時には、自分でケアをする。
自分でできなくなった時には、誰かが適切に支える。
特に高齢者や、身体を自由に動かすことが難しい方にとって、爪を切るという一見小さなケアが、大きな痛みや生活の質に関わることがあります。
だからこそ、介護や看護に携わる私たちには、正しい知識と技術が求められます。
高齢者ケアには、高い専門性が必要
高齢者の爪や皮膚は、若い頃とは大きく異なります。
血流状態、栄養状態、むくみ、皮膚の脆弱性、疾患、服薬状況など、さまざまな要因を考えながらケアを行う必要があります。
「爪を切るだけ」
「足を洗うだけ」
そう思われがちなケアの中にも、本来は多くの観察と判断が必要です。
だからこそ私は、介護や看護という仕事は、もっと専門性が評価されるべき仕事だと感じています。
人の生活に寄り添い、その人らしく生きることを支える。
それは、決して誰にでも簡単にできることではありません。
介護職、看護師、保育士、教師など、人と深く関わる仕事には、これからの時代、さらに大きな価値があるのではないでしょうか。
私は「キュア」より「ケア」を大切にしたい
医療の現場では、「治すこと=キュア(Cure)」が重要になる場面があります。
もちろん、治療は必要です。
しかし私は、日々の仕事の中で、
「キュアよりケア」
ということを強く感じています。
もちろん、すべての病気をケアだけで解決できるわけではありません。
治療が必要な時には、適切な医療につなげることが大切です。
しかし、日常の小さな変化を見逃さず、悪化する前に整えていくことで、防げるトラブルもたくさんあります。
例えば、
- 爪を切りすぎない
- 爪の白い部分を適切に残す
- 巻き爪を悪化させないよう観察する
- 皮膚の状態を整える
- 栄養状態に目を向ける
- 身体のポジショニングを工夫する
- 口腔ケアを行う
- 排泄を整える
こうした一つひとつの積み重ねが、その人の生活の質を支えています。
足のケアは、生活の質を変える
足は、私たちの生活を支える土台です。
しかし、足の痛みや爪のトラブルがあっても、「これくらい大丈夫」と我慢してしまう方は少なくありません。
巻き爪や足のトラブルは、高齢化が進む現代において、ますます重要な課題になると感じています。
だからこそ、できる限りトラブルが起きる前から、
自分の足を自分で守るための知識
を持っていただきたいと思っています。
例えば、
- 自分の足に合った靴を選ぶ
- 靴ひもを正しく結ぶ
- 正しい履き方を知る
- 足に負担をかけすぎない
- 身体を安全に動かす
- 爪を正しく切る
日々の生活の中で少し意識するだけでも、足や足腰のトラブルを防げる可能性があります。
「当たり前」を見直すことの大切さ
今回の事例から、私自身も多くのことを学びました。
これまで教えられてきたこと。
これまで自分が正しいと思って続けてきたこと。
それが、すべての人にとって正しいとは限りません。
だからこそ、
「本当にこの方法で良いのだろうか?」
と常に考え、目の前の一人ひとりの状態を観察し、見極める力が必要だと感じています。
これからの超高齢社会では、看護や介護、そしてフットケアの役割はますます大きくなるでしょう。
私たちケアを提供する側も、日々学び、新しい情報を取り入れ、自分自身の知識と技術を磨き続けなければなりません。
今回、一本の爪、そして一つの足のトラブルから、私は改めて大きな学びを得ました。
小さなケアが、その人の痛みを減らし、笑顔を取り戻し、生活の質を変えることがある。
これからも、一人ひとりの「足」と「生活」に寄り添いながら、より良いケアを提供できるよう学び続けていきたいと思います。
メディカルフットケア
吉本
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